はじめに。
ナツオ@小一が4歳から始めている柔術。当初は柔術の動きを取り入れた「柔術体操」クラスから参加し、年長になった昨年から柔術衣を着て本格的に練習している。
柔術はもちろん学校生活も学童も人生を全力で楽しんでいたナツオだが今回初めて挫折を味わう出来事があった。よっぽど悔しかったのだろう。帰宅してからは明らかに荒れていた。
ストライプがもらえずに落ち込む。
いつもの練習終了の挨拶の時に真剣な表情の先生。締めの挨拶の前に一言。
「今日はストライプを巻きます。」
ざわつく子ども達。「誰だ?誰だ?」「オレかな。」なんて会話をコソコソやっている。みんな落ち着かない。
もしかしたらそろそろナツオかな、なんて思っていたら呼ばれたのはナツオの親友でナツオが誘って一緒に柔術を始めたリュウタ。
「おぉ~!」とみんなが騒ぐ中、前に出て照れくさそうにしながらも誇らしげに先生にストライプを巻いてもらう。ナツオもみんなと一緒に喜び、拍手をしていたがどこか寂しそう。明らかに落ち込んでいる。リュウタはとてもストイックであり、子どもながらにいつも真剣で真っ直ぐ。決して周りには流されない。どことなく流川。落ち込んでいるナツオのことを気にしているのかストライプを巻かれても派手なガッツポーズすることもなく、口を真一文字にして喜びを隠していた。無骨でかっこいい。
クラスが終わるといつもはスパーリングをして少し練習していたナツオだがよっぽど悔しかったのだろう。さっさと更衣室に行きさっさと着替えていた。いつもは着替えてからもリュウタと遊んだりじゃれあっていたのに、ナツオからは近づこうとしない。リュウタももナツオの心を汲んでいるのかからむことなし。一年生にして既に男と男の友情が完成されている。
柔術におけるストライプの価値。
柔術の昇格制度は独特で帯色にプラスしてストライプの本数で評価されていく。大人だと帯色は白帯→青帯→紫帯→茶帯→黒帯の順。柔術の帯にはストライプを巻く箇所があり先生やインストラクターの判断でストライブが巻かれていく。ストライプは4本まで巻かれ、5本目が巻かれるタイミングで次の帯色に昇格。つまり帯を見れば、「帯色+ストライプの本数」がわかるのでその人の強さがある程度わかるようになっている。白帯、白-1、白-2…白-4、青帯、青-1…ってな具合。
柔道や剣道のように昇格についての客観的な基準や審査はなく、各道場やジムごとに基準は異なっている。試合での実績や強さだけでなくうまさや練習に向かう姿勢等が総合的に判断されて評価されていく。帯色の昇格という大目標の手前にストライプという小目標があるので自分の成長や達成感を味わいやすくモチベーションを維持し続けられるのが嬉しい。ストライプを先生に巻いてもらうということは先生に一つ認められたということなので大変価値があることなのです。
恐らく初めて味わう挫折。
小学一年生でストライプを巻いている仲間は他にもいるが、彼らは練習回数が週に2、3回と多いのでナツオなりに納得していた。「○○や●●は練習たくさんやっているから」と。ナツオは平日は学童で友だちと遊ぶのが楽しいらしくまだ練習回数を増やす気はないみたい。もっとやって欲しいという思いはあるが無理強いしても嫌いになるだけなのでそこはナツオの自主性に任せている。
そんなナツオなので他の子がストライプを巻かれても納得しており、今までは落ち込むことはなかった。しかし、リュウタはナツオと同じタイミング、同じ頻度での練習なので条件は一緒。ナツオにとって言い訳はできない。それがわかっているだけに悔しいのだろう。帰宅してからはまだ2歳のレンタに「柔術の特訓だ」と言って技をかけては泣かせたり、「俺はストライプに興味ないから別にいいんだ」と強がったりと情緒不安定だった。悔しさやモンモンした感情をうまく消化できていないんだろう。
おわりに。
1週間経ってようやく落ち着いてきたがとにかく荒れていたナツオ。その態度から悔しさが伝わってくる。しかし初めての挫折が健全な挫折なのでとても建設的でよかった。サッカーや野球のメンバー落ちのような挫折ではなく、あくまでもまだ基準に満たないことによる挫折。つまり解決策も「レギュラーがケガすれば僕がレギュラーになれる」という誰かの不幸を願うものではなく、自分がしっかりと練習すれば評価がついてくるもの。そういった挫折を早いうちに味わえたのは良かった。自分の努力次第でしっかりと結果はついてくる。お手伝いとしてキッズクラスに参加しながら見ている限りだとナツオとリュウタの間に技術的な差はほとんどなく、姿勢の差な気がする。上級生を相手にしても積極的に攻めていけるかや先生のレクチャーを真剣に聞いているかといったところ。リュウタに先を越されて悔しい気持ちはわかるが、ふてくされることなく真剣に練習していけばすぐにストライプが巻かれるはず。
これはあれだ、今こそあの言葉をかけるチャンスだ。
ナツオよ、「負けたことがある」というのがいつか大きな財産になるんだよ。
「いや、オレスパーリングしたら負けないし」なんて強がり言葉がすぐに返ってきそう。若いって素晴らしい。このまま互いに切磋琢磨していってほしい。