居酒屋タクシーに素敵な選TAXI。
タクシーにまつわる話は昔から数限りない。
何か持っているのだろうか。
たまたま乗車したタクシーからラジオドラマのような展開が始まった。
繁忙期中ではあるが一息ついたこともあり、仕事後にパーッと飲みに行く。
残業代は所詮はあぶく銭。
あぶく銭ならば蒸発する前に泡として飲んでしまうに限る。
歳なのか、ストレスなのか。
ついつい飲みすぎてしまい、電車に乗りすぎてしまう。
起きたらどこだよここ!な駅。
グーグルマップで調べると徒歩で2時間8分の距離。
マラソン選手を目指しているわけではないので、2時間10分の壁はあまりにも厚すぎる。
できる社会人よろしく颯爽とタクシーへ乗り込む。
そしてここからラジオ深夜便に投稿したら好感をいたたきそうな展開が始まる。
ゆっくり寝ようかと思ったが話好きそうな運転手さんだったし、お酒を飲んでいい気分だったので話しかけることに。
話にのるか寝るか。
この選択が運命の分かれ道。
後部座席のシートベルトの話から個人タクシーにまつわる話、最近話題のウーバーの話へ。
知らない業界の話ばかりなので、なるほど!なるほど!と半分ウトウトしながら聴き入る。
そして会話は運転手さんの前職の話へ。
楽しく聞きながらもちょこちょこ気になってくる箇所が出てくる。
どうやら私と同業界出身のよう。
業界あるあるで盛り上がっていく。
盛り上がること数十分、急にべらんめえ調で最近会社はどうだい?と突っ込み始めてくる運転手さん。
?
まさかと思って、スーツのボタンをはめてきちんと座り直す。
そうです、運転手さんは当社のOBというか大先輩でした。
20年近く前に教育的指導をしずぎてしまい自ら退社したとのこと。
体育会系な会社なので納得な退社理由。
互いに素性がわかってからは、絶対に社内では聞けない裏話のオンパレード。
役員と先輩後輩や同期の世代。
知られざるエピソードトークの数々が聞ける。
コンプライアンスなどない時代っていいな。
役員や上席に話したら喜んでもらえそうな話題も多い。
食品事業部が長く、新商品の開発やメニュー監修等のお仕事がメインだった運転手さん。元々は料理人だけあり、三國さんや石鍋さん、服部さん、辻さん達、レジェンドな料理人の話も出てくる。
確かなバックボーンがある人のお話は深い。
こちらも会社では絶対に聞けない質問して大興奮。
非常におもしろい話ばかりで一気に酔いも冷めて聞き入るばかり。
こんな出会いもあるんだな。
そして、後輩である私に深い言葉を数々投げかけてくれる。
運転手さん
「エスコフィエやキュイジーヌって言葉はもちろん知っていると思うけど、人に説明できるかい?
何万円もする本を買う必要はないけれど、○○や××の本は新書でも出ているし読んで流れを知るべきだね。
お金は惜しんじゃ駄目だよ。
本業とは違うけれど、飲食物も扱っている会社なんだから食品だけでなく、料理に関する知識も持っていないと。どんな分野でも王道と基本は抑えておかないと。」
料理人出身だからだとは思うが、食品扱っているだけでもオーギュスト・エスコフィエを学べか。
王道と基本。
深い。
もう夜中の3時近くだったけれども、眠気などすっ飛んでいる。
運転手と客ではなく、完全に親方と小僧の関係。
居酒屋タクシーなんか目じゃないくらい、本当に居酒屋で飲んでいる雰囲気。
非常に濃厚な時間。
降り際には、先輩として端数をずばっとおまけしてくれる。
運転手さん
「いつか社員を乗せると思っていたけど本当に乗せる日が来るなんて。お客さんみたいな若い人達が会社を引っ張っていくんだから勉強を続けで頑張っていきなよ!」
と去っていくタクシー。
VIPのお車を見送るように見えなくなるまで思わず最敬礼。
7千円は貴重な授業料となった。
どこでどうつながっていくかわからないから出会いっておもしろい。
深夜に起きた不思議な展開にまだ思考が追いついていかない。
あのタクシーはパラレルワールドからやってきたんじゃないだろうか。
朝起きたら島耕作になっていないかな。