もう4ヶ月になるレンタの3ヶ月健診へ行ってきた。
我が社の夏休みは5日間を自由に申請するシステム。
せっかくなので夏休を消化して夫婦で保健センターへ出かける。
5年前のナツオの時に一度経験していることもあり、余裕のよっちゃんの私。
初めての3ヶ月健診の時は、わからないことだらけという余裕のなさと、女性ばかりの空間に圧倒されて意味もなくオロオロ。
妻の背中をただひたすら追いかけることしかできなかった。
しかし今回は違う。
2人目という余裕が醸し出すオーラが全身にみなぎっている。
他のママさん達がどことなく不安そうに座って、赤ちゃんとお話して時間を潰している中、妻はマンガを読み出し、私はレンタを抱っこしながら待ち合い室となっている保健活動啓蒙コーナーをウロウロ。
普段は入ることがないだけにとてもおもしろい。
保健室にある図書コーナーにいるようなドキドキ感。
覚せい剤の恐怖を知らせるコーナーやDV防止コーナー、HIV検査の重要性を訴えるコーナー等、なんでここが3ヶ月健診の待ち合い室コーナーなんだ?な中でついつい惹かれたのがLGBTコーナー。
一つのコーナーとして確立しており、ライトな雑誌からヘビーな書籍までたくさんの情報が溢れている。
そして異様に充実しているのがLGBTの「G」に関する情報。
区が運営しているオフィシャルな施設とは思えないほどに情報が溢れている。
ふだんなかなか接することがないだけに、各種パンフレットについつい手が伸びてしまう。
なかなかレンタの順番にならないので、そのパンフレットでも読もうかと思ったタイミングでレンタの順番。
5年ぶりの3ヶ月健診が始まる。
やっぱり2人目。
保健師さんも私も余裕がある。
異常がなかったこともありやり取りも至極スムーズ。
先方「困ったことや大変なことはありますか?」
当方「いや、特にありません。2人目なんで余裕を持てますね。」
先方「ですよね。」
両方「ワッハッハ」
医師による診察を待っている間も夫婦で他の赤ちゃんを見ては「レンタの勝ちだね/負けだね」なんて失礼極まりない事をコソコソ言いだす始末。
どの子もみんな可愛いってのに。
医師による診察も無事に終わり、後は帰るだけとなったので帰宅前に妻はレンタを連れて授乳室へ。
私は受付前のベンチシートで待つことに。
ここで先ほどピックアップしたG関連のパンフレットを取り出す。
どれもこれもクオリティが高くておもしろかったが、その中でも驚いたのが「ヤローページ」なるイエローページを模したと思われるフリーペーパー。
ゲイスポットガイド&HIV検査情報なのだが、「ハッテンバ」紹介もされている。
まさか、区の施設で「ハッテンバ」という言葉を目にするとは。
しかも、紹介の仕方がまるでホットペッパーのよう。
お店の内容紹介に加えてジャンルまで「ヒゲ」やら「スーツ」やら「ガッチリ」やら「ぽっちゃり」やらと色々とマークが入っている。
なるほど、こりゃ便利だな、実にわかりやすい。
と受付前でひとりでふむふむ、と読みこむ私。
お店のオーナーのインタビュー記事も面白く、良質のフリーペーパーとして楽しく読める。
そりゃ、若い頃は何度も二丁目のお店に連れていかれたし、社内には当然のようにいるし、妻の影響で「きのう何食べた?」もよく読むので違和感はない。
過去には図書館でおにいさんに一回、おじさんに一回と二回もナンパされたことがあるくらいだから何か持っているのかもしれない。
授乳している妻のことなど忘れて没頭してしまっていた。
すると、ふいに受付で名前を呼ばれる。
アンケートの回収であった。
スッと立ちあがり、受付で渡されたクリアファイルにアンケート入れてサッと渡す。
まるでできるビジネスマンのよう。
さて、続きを読もうか。
しかし、ヤローページがない。
あ!
その0.2秒後に脳内でクールポコが叫び出す。
「やっちまったなー!」
うっかりにもほどがある。
クリアファイルにアンケートと一緒にヤローページを含む、大量のゲイ情報誌を挟んでいたのだった。
受付を見ると向こうもちょうど気づいたのであろう。
受付のお姉さんが近づいてきて、「これらは提出不要ですので返却しますね。」と爽やかなスマイル。
もう、ひとり立ちあがってあたふたする私。
「いや、違うんです。違うんですよ。」
この様子を動画に納めていたらいつか役立つであろう。
これが「狼狽」と言うんだよ。
と動画を見せながら解説すれば誰もが理解するであろう、あわてふためきかた。
女性ばかりの空間で一人立ち上がり、顔を真っ赤にしながら「いや、違うんです、違うんですよ。」と慌てているスーツ姿のおっさん。
「怪しい」以外の何物でもない。
そしてそのタイミングで妻の授乳が終了。
立っている私のもとへやってきて一言。
「何立ってんの?」
救われないけど救われた。
とりあえず「私は怪しいものではありません。この可愛らしい赤ちゃんの父親であります。」というメッセージは発信できたはず。
人生も仕事も子育てもみんなそう。
落ち着きが肝心である。
提出前に落ち着いて中身を確認していれば気持ちよく一日が終わっていた。
今日の私は自分自身の落ち着きのなさに負けたのである。
「負けたことがある」というのがいつか大きな財産になる、
そう強く思いながら抱っこひもの中にいるレンタをぎゅっと抱きしめながら帰宅したのであった。