産まれてから死んでいくまで何かと待機させられる日本。
我が家は待機児童とは無縁だったものの、待機特養には陥ってしまった。
特養、つまり特別養護老人ホーム。
終の住処の老人ホームなので空くのは入居者がいなくなった時、つまり亡くなった時。
誰かの死を待ち望まなくてはいけないなんてあまり気持ちよいものではない。
幸いにも私の母は数ヶ月待ちで入居できたので恵まれていた。
↓その時のお話↓
特養への入居から2ヶ月。
レンタの写真を持ってナツオと一緒に報告がてら母を訪ねに行く。
母を訪ねたのは入居してから初めて。
当然ながらナツオは行くこと自体が初めて。
この特養には職員さん用の保育所が併設されており、入り口付近の大きなお庭には園児たちが10人くらい遊んでいる。
いきなり一緒になって遊びだすナツオ。
とりあえず鬼ごっこを始めている。
子どもってのはつくづく凄い。
一瞬で打ち解けてしまう。
ナツオをちょっとだけ遊ばせてから母のもとへ。
久々に会う母は以前のようにすらっと痩せて表情も少し豊かになっていた。
もともと痩せていた母だったが、老健入居時には車いす生活だったこともあり急激に太っていった。
それが今回は別人かってくらいに痩せている。
息子としては昔の面影を感じられてとても嬉しい。
持って行ったナツオとレンタの写真を食い入るように見つめる母。
そしてレンタの出生時の話を楽しそうに聞いてくる。
ナツオにも積極的に話しかけている。
朝に何を食べたかも思い出せないのに、数か月ぶりに会う孫のことはしっかりと覚えていてくれる。
人間は不思議だ。
昔は、会話がつながらないことにストレスを感じてあまり話さなかったナツオもちゃんと会話に付き合うようになっていた。
息子の優しさと成長を感じて嬉しくなる。
職員さんに話を聞くと、施設内では圧倒的に若い母を入居しているみなさん可愛がってくれているらしい。
また、リハビリが目的の老健とは異なり、生活の場である特養なので生活を豊かにするサークル活動も盛んとのこと。
母もフラワーアレンジメントや習字のサークルに入って手と頭を動かしているよう。
もともとフラワーアレンジメントは好きだったのでその効果で表情が豊かになっているのだろうか。
入居者からみたら孫のような私とひ孫のようなナツオの登場に、みなさんよく話しかけてくれる。
特に、ナツオにはもうあっちこっちから声がかかる。
もうみんな笑顔、笑顔。
子どもってのはつくづく凄い。
一瞬で大人の心を打ち砕いてしまう。
そして、それを見て母もニコニコしている。
母の為にはもちろん、みなさんの為にもなるたけナツオを連れて母を見舞いに行こうと感じた。
帰り際に母の習字の作品を紹介してもらった。
「幸福」とか「富士山」といったある種定番な言葉が並ぶ中にある母の作品。
「玉人」と「平」
???
恥ずかしながら初めて見る言葉。
平はともかく、玉人とは?
きっとこれは母からの何かのメッセージに違いない。
この二つの言葉の意味が解けた時に母は回復するはず、
と信じたい。