この前喪主を務めたんですよ。初めてね。
で、生まれて初めて通夜告別式を取り仕切ったわけですわ。
正直最初は葬儀を取り仕切るのなんて簡単だと思ってたのよ。
みんな普通に仕切っているからさ。
あのね、私が間違ってた。
あれは普通の人が仕切るもんじゃない。
神だね。もしくは、仏様。
人間界を超越して鋼の精神力を授かった者だけが取り仕切れるものだよ。
最初に一礼をする時にさ、めちゃめちゃびびってそろ~って頭下げてそろ~って頭上げたのよ。
10秒くらいかけてさ。
でなんか緊張しながら参列者の方を見たのさ。
そしたらたくさんの参列者が涙をこらえたり嗚咽しながら父の遺影を見つめているの。
同じ過ちは2度繰り返さないのが私よ。
だから堂々とお辞儀をしたのさ。
えぇ、そりゃもうお辞儀しましたとも。
全てを忘れて頭下げ続けたよ。
うちらには口数少なく常にいらいらしているような人だから職場でも嫌われているんじゃないかとか
家族葬ではなく一般葬にしたけれどどうせガラガラだから通夜ぶるまい持って帰る
タッパー用意しておくべきかなと考えていたこととか色々忘れてね。
だって父が「俺の葬式なんてどうせ誰も来ないよ」なんて言っていたからね。
そしたらエライ事になった。
もうすごい人、人、人。
人が多くて焼香時の返礼がすごい大変。
右に左にとお辞儀し過ぎてメトロノームみたい。
いや、これがメトロノームだったらテンポ早すぎてウィーン・フィルハーモニー管弦楽団でさえ演奏できないんじゃないかってくらい。
それで横見たら鏡の中の私がすごい勢いで涙こらえてんの。ホントごめんなさい。
正直「どうせガラガラなんだから簡素にやればいいんだよ。シンプルイズベスト!」
なんて強がらないで素直にもっともっと父らしい送り方を考えておけばよかったと思ったよ。
心の底から、父の最期のお別れのことを考えてあげられなかった薄情な自分を恨んだね。
でも焼香に来てくれた友人に
「介護の必要なくあっさりと逝ってくれたんだからいい親父だったね。
あんな親父でもちゃんと子どものことを考えてくれてたんだね。」
とか言っちゃってんの。
ホント私ってダメ人間。
父よ、まだまだ未熟な息子です。
あっちからたただただ見守るだけでは不安でしかたないでしょ。
たまには化けて帰ってきてください。
もっともっと腹を割って話をしたかったです。