ナツオが風呂好きに育っているおかげで、
なにもない日の選択肢が増えてきた。
風呂行くか?
と投げかけるとテンションあがるナツオ。
「お風呂行きたい!
あわあわのお風呂行こう!」
と元気になり、
わざわざ義母のところに行って、
「おとーさんとお風呂行くんだ~。」
と報告している。
そんなわけで、ナツオをだしにして
男2人で銭湯へ。
お気に入りの銭湯はスーパー銭湯といったナンパなものではなく、
公衆浴場法で定められた立派な銭湯。
しかしながら、昔ながらの銭湯画はなし。
あのレトロなタイル画の富士山は見られない。
と思ったら、もっと美しいものを見る機会に恵まれた。
ナツオが体を洗っていると優しい声が。
「ボクはひとりでからだ洗って偉いな。」
「ありがとうございます。
息子なりに頑張って洗ってるんで…す…よ!?」
返事しながら振り向くと、
目の前の背中にとてもとても立派な芸術作品が。
びびって目をそらすようなものではなく、
思わず見入ってしまうレベル。
肩から足までのとても壮大な作品。
しかも、フルカラーで美しい。
目が吸い込まれてしまう。
まじか?
昭和映画の世界でしかお目にかかれない代物。
そして、映画の通り任侠の人たちは子どもに優しい。
お風呂に入っていれば、
「ボク、熱くないか?凄いな!」
脱衣場では、
「ボクは何歳だ?二歳かかわいいな。」
と、何かと気にかけてくれる。
なぜかナツオも打ち解けたようでよく話している。
昔も今も銭湯は地域の社交場です。
ナツオが余計なことを口走らなくてよかった。